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「松蓮聖戦」
第3章 白蓮青松

露草(side:拓磨 in “水月の舞”)【白蓮青松 №24】

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露草(side:拓磨 in “水月の舞”)【白蓮青松 №24】



 華小路家の屋敷の前で車がとまった。
 同時に
 たちまち 門が大きく開かれた。

「ようこそ!赤瀬川様!」
 喜色満面に門番が迎える。

「このたびは…本当にありがとう存じます…!」

 「このたび」…?
 どうやら…今 渡したチップのことでは ないようだ。

 玄関にはいるやいなや
「赤瀬川様!お待ち申し上げておりました。」
 古くからこの家に仕えていた執事…柳生が 出迎えた。

「…鈴音様…は?」拓磨の問いに 柳生は 静かに答える。 

「お戻りに…なられて…おられます。ただいまは、お部屋の方に…」

 ようやく
 肩の力を抜いた。
 
「お父さん…」

「わかってる。早速 ご挨拶に伺え。
 わしは 公爵閣下に 式の準備あれこれ ご相談申し上げる必要があるからな。」

 ほっとしたように笑って 拓人は柳生の案内で別室に向かう。

 すぐに彼女の部屋に足を向ける!

 2日!
 たった 2日 会えなかった…!
 それだけで もう どうにも 我慢できない…!!

「拓磨様 ようこそ!」彼女付きの女中が 弾んだ声で迎える。

「このたびは 本当になんとお礼申し上げればよいか…!ありがとうございました!」

 …門番といい この女中といい…
 鈴音様は よほど使用人から 慕われているようだ。

 彼女の部屋に近付いたとき 琴の音色が聴こえた。

「これ…」

「はい。鈴音様が…!」

 客の来訪を伝えるべく
 声をかけようとする女中を制止する。
 
「ここで しばらく 聴いていたい…。」

「あ。それでは 隣室で!飾り窓から お姿もごらんになれますし!」

「ありがとう」

 女中が案内してくれた隣の部屋。
 壁を丸くくりぬいて しゃれた木の桟をはめこんだ 飾り窓から
 彼女が一心に琴をつま弾く様が見える。

 可憐なその姿をうっとり見つめる。

 よかった!
 取り戻せて!!

 あぶなく
 もう彼女に会えなくなるかと…!

 考えただけで ぞっとする!

 すぐにもそばに行きたい…けれど…!

 彼女の前に立つと
 どうしても 言葉が出なくて

 目の前で あまり じっと見続けているわけにはいかず
 いつもいつも どうしていいか わからなくて

 でも ずっと そばにいたくて

 そわそわと 落ち着かない俺を…彼女は どう…思っているのだろう…。

 少なくとも

 惚れて…くれては…いない…。
 好きに…なってくださっては…いない…!

 口の中に 苦いものがこみあげる。

 皮肉なものだ…!

 この見てくれで
 たいがいの女は 程度の差こそあれ 俺に興味を示した。

 うっとおしいほど…!

 今

 どうしても
 どんなことをしても

 その心を得たいと
 苦しいほど 焦がれている女性に

 毛筋1本ほどの関心も寄せてもらえない…!

 ためいきを おさえながら 琴の音に耳を傾ける

 素人の耳にも かなりの腕前とわかる…
 だが…聴いたこともない…曲だ。

「この…曲は?」

 折良く茶を持ってきてくれた女中にそっと尋ねた。

「はい。『愛の夢』だそうです。」

「…え?」

 そんな 琴の曲…あったか?

「原曲は、クラシック音楽の…リスト作曲のピアノ曲だそうです。
 お小さい頃、公爵様がお持ちのレコードをお聴きになって
 とても お気に召されたそうで…でも…ピアノはお高いから せめてお琴で…と。」

「そう…。」

 ピアノ…!
 新居の調度品リストに加えよう!早速!

 クラシック!
 蓄音機にレコード一式…!

 手配しなくては!すぐにでも…!

 他には…?!

 いったい 彼女の好みは…!?
 飾り窓越しに 隣の部屋を見回して 気づいた。

 部屋の片隅で 丸っこい焼き物から薄く煙がただよっている。

「あの…あれ…は?」

「香炉です。今、薫いておられるのは 鈴音様が練られた荷葉です。
 よい香りでしょう?鈴音様は 香合の腕も 確かでいらして…!」

 こうろ タく ネる かよう こうごう…?
 
 どうしよう…!
 商売算術や語学といった実用分野は得意でも

 そういった 高貴なご趣味は 皆目わからない!

「お花もお茶もお琴も 沙也加様よりはるかにお上手でいらっしゃって!」
 うれしそうな 弾んだ口調。我がことのように 誇らしげだ。

「私ども みんな これでは どちらが 正当なお嬢様やら…って…」
 女中が はっと口をつぐんだ。

「も、もうしわけありません!口がすべりました!」

「いや 全然 気にしないから。」にっこり ほほえんだ。

 俺もそう思う。

 家のためには 受けるしかない縁談を 自己中心的な発想でいやがったお嬢様。

 冷遇されてきたにもかかわらず
 家のため 政略結婚の道具になる覚悟を決めて 本宅にやってきた妾腹の娘。

 心映えがまるっきり違う!

 使用人達の心が 鈴音様寄りになってしまうのは 当然だろう!

 はたりと琴の音がやんだ。

 彼女は そのままの姿勢で なにごとか 思いにふけっている。

「鈴音様に おとりつぎいたしましょう。」女中が立ち上がった。

「…拓磨様。お久しゅう存じます…。」

 優しくおだやかに 俺を迎え入れてくれた声は
 鈴が鳴るように美しい…。その名前のとおりに…!

「お会いしたかった…!!」

 思わず
 本当に思わず
 かけよって抱きしめてしまっていた…!

 彼女の体が 堅くこわばってしまったのを感じて
 あわてて 離れた…!

「も、もうしわけありません!失礼な…こと…!」

 …なにを!
 なにを やってるんだ!俺は!

 …家のために…仕方なく…覚悟きめてるだけ…の
 まだ…15歳の…少女…に

 怯えられて…!
 嫌われてもいいのか!

「…いいえ。」彼女は ゆったりとほほえんだ。

「教えてください!」

 思わず叫んでいた。

「あなたのお望みなら なんなりと かなえます!!
 ほしい物があるのなら なんとしても手に入れます!
 行きたいところがあるなら どこにでも お連れします!」


「え…?」

「一生懸命 勉強して!あなたのご趣味にも きっと精通します!
 あなたの…あなたの意にそうような…男になれるよう…努力します!」


「…拓磨様…。」

「教えて…ください…!」

 生まれて初めて
 心底 真剣に 祈るように頼んだ…!

「…どうすれば…あなたは…心から…俺の妻になっていい…と思って…くださいますか?」

「拓磨様…!」

「どうすれば…!」
 
 すっと
 細い美しい指を ほほに当てられて
 
 初めて
 自分が…泣いて…いた…ことに気づいた…・。

「あなたは…そのままで 充分…素敵な方です…。」
 そっと 彼女がささやいた。

「私は 喜んで あなたの…妻に ならせていただきます…。」
 優しくほほえみかけてくれた…その笑顔は おだやかで慈しみに満ちていた。

 それなのに…

 なぜだろう…

 その底に…
 深い深い底の方に

 見えるような気がした…

 哀しい…泣き顔が…。















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