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「松蓮聖戦」
第5章 仙友浄友

片割月(side:k)【仙友浄友 №15】

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片割月(side:k)【仙友浄友 №15】





「読書感想文コンクール、全国2位…?」

「う、うん…あの…ね!先生がたが すごいことだよ!…って すごくほめ…」

 うきうきと報告していた言葉が途中で止まってしまった。
 手渡したばかりの賞状が シュレッダーにかけられたのだ…

 …母の手で…

「なぜ、1位じゃないの?」

「…っ!!」

「言ったはずよ。100点以外は 1番以外は認めないって。2番?ビリと同じよ!」

 娘の顔を見もせず、冷然と言い捨てた。

「そんなくだらないことで、私の邪魔しないでちょうだい。」

「…ご…めんなさい…」

 と…わびる娘の声など、もはや聞こえぬというふうに女は仕事にもどる。

 1番じゃなきゃだめ。
 満点じゃなきゃだめ。 
  優秀じゃなきゃ だめ。

「また、京子ちゃんを預かるのかい?」

 ほとほと あきれたという男の声が響く。

「今度は いつまで…だ?」

 ありありと『迷惑』という色がにじんでいる。

「仕方ないわよ。あのひとも、いそがしいから…。」

「うちを託児所とでも思ってるんじゃないのか?」

 働かなきゃだめ。
 役に立たなきゃ だめ。 

  有能じゃなきゃ だめ。

― 自分の家と思ってくつろいでね。― 

 『自分の家』…?

 どこが…?

 どこにあるの…?

 『くつろぐ』?

 どこで…?

 どういうふうに…?

 どういうふうに…!!

 自分の家…。自分の家…?自分の家!!

 そんなもの…
 この世のどこにも ありはしない!

   ― …みさん…
 
 どこにいても厄介者!邪魔者!要らない子!!

   ― …がみさん

 優秀じゃなかったら 役に立たなかったら いさせてもらえない!

   ― もがみさん…!
 
 この世のどこにも…私が「くつろぐ家」なんか…!

「最上さん!!!」 

「…っ!!」

 …え…?

「…ごめん…ひどくうなされてたから…起こした方がいいかと…」

 …だれか…の声…

「…もがみ…さん…?」

 …だれだっけ…

「最上さん!?」 

 がくがくと肩が揺さぶられてるようだ…

「しっかり!どうしたんだ!?
 最上さん!!


 耳元で なにか叫んでるようだけど…ずいぶん遠い…。

「…ごめんなさい…」

「…え?」

「今度は 1番になります、ごめんなさい まま ごめんなさい」

「…っ!」

「ごめんなさい 大将 女将さん 私 働きます お役に立つようがんばります…」

「や、やめろ!最上さん!」

「だから ここにいさせて 家においてください…お願い…!」

「頼む!やめてくれ!」

「私は きっと…お役に…!」

「最上さん…!!」 

 ぎゅっと顔を胸におしつけられて 何も言えなくなってしまった。

 ― どんどんどん ― 

 遠くでノックの音がする。

「おぼっちゃま!」「なにかありましたか…!?」

「入ってきてくれ!遠藤さん!」

 若い男の声…ずいぶん…悲痛だ。

 ばたーんと勢いよく扉が開く音がする。

「京子様!?」「ど、どうなさ…」

 中年の男女の声…。

「…佳奈。温めたミルクだ。アルコール入りで。」

「はい!」

「遠藤さん!どうすれば…!」

 ふわりと肩にタオルケットがかかった感触。

「…そのまま…抱きしめて差し上げてください…落ち着かれるまで…」

「で、でも…」

「病院に連れて行ってどうにかなる…ものでは なさそうです。お心が傷ついてらっしゃる。」

 ぼそぼそと 遠くで…誰かが なにかを言ってる…

 私には 関わりない 遠いところで

「自分の家なんて…ないもの…」

「…え…?」

「くつろげる…とこなんか…ない…もの…。」

「…っっっ!!!」 

「…がんばるの…私 役に立つの…そうしなきゃ いるとこないもの…」

「…もがみ…っ…」

 ぽたぽたっと顔に熱いものがかかる。

「ごめん!不用意…なこと…心ない…こと 言ってごめん!」

 熱いしずくが したたる…とめどなく…。
 私のほほに…。

 背中に回っている腕の力は 痛いぐらい…

「悪かった!俺が…悪かった!!ごめん!最上さん!」

「おぼっちゃま…!」

「…京子様…さあ 温かいミルクです。甘いカルーアたっぷり入れました。」

 優しい女の人の声…。

 ふっと 甘くてかすかにこうばしい香りがした。

「…俺が 飲ませる…から…。」

「ええ…。私どもは 下がらせて頂きます。」

「何かございましたら どうぞ  ご遠慮なく お呼びくださいませ!」

「ああ。ありがとう…。」
 
 ぱたんと 扉の閉まる音がする…。

 …と同時にあごを持ち上げられ、口の中に温かい液体が流れ込む。

 甘くて…やさしい…こうばしい香り…の…。

 あたたかいものが…のどの中をしみとおっていく。
 何度か繰り返されているうちに…しだいに 世界が色を帯びてきた。

「君がいるだけで…いいんだ…。」

 ミルクよりも 甘い優しい声が 耳に響く。

「君がいてくれれば…それだけでいい。」

 わたし…が…?

「君に会えてうれしい。君に会えてよかった。」

 わたしに…?

「君だけだ。俺を幸せにできるのは…。」 

 …わた…し…?

「君がいなければ…生きていけない…。」

 唇に熱いやわらかいものが ふってくる。

「…っ!」

 ぎゅっと その胸にしがみついた。

「生まれてきてくれて…ありがとう…」

「うっ…」

 眼から熱いものがわき出てくる、後から後から泉のように…。

 いていいの…?
 私…ここに…本当に…?

 神様
 私にも…家をもらえるの…?

 本当に…?

 こんな私でも…本当に…いいのですか…?


 本当に…?!
  
 本当に…!!
  



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