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「松蓮聖戦」
第5章 仙友浄友

時雨(side:真吾 in『埋み火』第13話) 【仙友浄友 №54】

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時雨(side:真吾 in『埋み火』第13話) 【仙友浄友 №54】

「橘…殿…?!」

 銃弾に倒れた二人の男の死体を前に 呆然と 俺を見つめる。

 すっと 右手に持った拳銃の先を ヤツに向けた。

「…っ!」

「…説明しろ…」

 真っ正面から にらみつける。

「…夫婦…とは どういう…ことだ…!?」

「…聞いたとおりだ…舞と 俺は…二月前から」

 ダァーン!

 ヤツのほほに 一筋の傷がついた。
 つつっと 細い血が流れる。

「…語学だけでなく…銃の扱いまで学ぶのか…通詞という役目は…」

「身を守るためだ。どうしても 危うい場所に行くしかないのでな…。」

 ヤツから 目を離さないまま 銃弾を装填する。

 そのすきに ぐっと 間合いをつめてきたが
 刀が届く範囲に入る直前 チャッと 正面から 銃を突きつけた。

「…俺を…殺すのか…。」

「舞殿を守って 華々しく散ったと 言っておいてやろう。彼女には。」

「俺達は すでに…」

「言うな!」

 怒りのあまり 目の裏が焼けそうだ!

「…お前さえいなくなれば…すべて なかったことにできる!」 

 激鉄をおこして 引き金を引き絞った。

「…ん…」

「…!」

 舞殿!?

 瞬間
 一歩踏み込んだ ヤツの刀が 弧を描いた!

 う!

 刀の背で したたかに腕を殴られ たまらず 銃を取り落とす。

 カーン!

 ヤツが 銃を部屋の端に 蹴り飛ばした。

「…形勢逆転…だな。」

 ヤツが 刀の向きをひっくり返し、刃の方を俺の首筋にあてる。

「殺せ…!」

 もう どうでもいい…。
 舞殿と共にいられない人生など…。

「貴様は、舞の恩人。殺したりなぞすれば 生涯 彼女に 泣かれてしまう。」

 辛そうに ヤツがつぶやいた。

「それに…今は 彼女のことが 心配だ。戦闘中 妙な倒れ方をしたんだ!」

「…え?!」

「すぐに 診療所へ 連れて行く!決着は その後だ!」

「…ああ…。」








「お、お腹に やや…が?」

「そうとも!こんな時期に 無茶をして!危うく腹の中で 子が死にかけておったぞ!」

 初老の医師が 腹立たしげに はき出す声に 目の前が真っ暗になる。

「京都から ここまで 夜に昼ついで 旅をしてきただと!?かよわい女の身で!
 しかも みごもっておるのに!なんという 馬鹿なことを!!」

「そ、そうとは 知らず!」

 ヤツが 真っ青になって 平伏した。

「そ、それで 無事ですか!妻は!子は!」

 必死に 医師に詰め寄って 問いただしている。

「処置が早かったので 何とか…な。だが 当分 絶対安静。決して動かすな!」

「は、はい!先生!ありがとうございます!!」

 何事か まだ説教を続ける医師の声が ぼんやり遠い。

 ふらっと立ち上がって、廊下に出る。

「橘殿…!」

 ヤツが 後を追ってきた。

「…ついててやらなくていいのか…女房に…」

「…!橘…殿」

「…私の父は 足軽だった…」

「?え?」

「平静な世なら、生涯 うだつの上がらぬ 貧乏暮らしだったろう。」

 黒船来航という未曾有の事態を迎え、
 真に実力のある者を登用するようになったからこそ 成り上がれた…。

「佐倉様は 藩主のご子息とはいえ、13番目のお子。養子先もなく、不遇のお身の上で
 父の才を愛でてくださって 身分の隔てなく接してくださった。」


「…?」

 ヤツが 何を言い出すのか?という目で見ている…。

「父の伴をして…初めて 舞殿に お目にかかったのは 10の年。
 あの方も まだ 8つで…。」


 お父上のそばで ほほえんでおられた その愛らしい姿に…心がときめいた。

「そのころから…ずっと 秘かに想い続けてきた…。身分違いとは 承知の上で…。」

 こちらは 元足軽。
 あちらは、彦根藩の姫君。

 もとより釣り合う立場ではない。

「思いがけなく 私を舞殿の婿養子に…と 大老がおっしゃってくださったのは 今年の如月。
 お亡くなりになる一月前のことだ。きっと、なにか虫の知らせでも おありだったのだろう。」


 憧れ続けた…女性を妻にできる…!

 夢かと思った。
 夢のような幸せだと。
 
「…。」

「舞殿は 親孝行な方。嫌も応もなく 受けてくださった…が」

 けれど
 わかっていた。

 父上の言葉だから 従っただけで
 私を…愛してくださってるわけではない…と。
 
「愛してはいただけてなかった…それだけの…こと!」

 でも

 生涯かけて 尽くせば
 いつかは 応えてもらえる…。

 そう
 心で 祈って… 

「橘殿!」

「誓え!」

 振り返ってにらみつけたヤツの顔がかすんで見えて…自分がみっともなくも泣いてると知る。

「あの方を泣かせない…必ず 幸せにすると 誓え!」

「…命に替えても!」

 真摯な表情でヤツは まっすぐに見つめ返してきた。

「…もし…舞殿を ご不幸な目にあわせたら 私が奪い返しに行く…。」

 いつでも…
 どこへでも…!

「幸せにする…必ず…!」

 くるりときびすを返して 出口に向かう。

「橘殿…!」

 ヤツの悲痛な声を 背に浴びる。
 もう二度と振り返らず 外に出た。
 
 晩秋の夜
 しのつくような雨が降っていた。

 舞殿…寒い思いはされてないだろうか…。
 
「愛していました…私は…」

 私が…あなたを幸せにしたかった…!

 私が!!

 体にしみ通る雨は 氷のように冷たかった。












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