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「松蓮聖戦」
第5章 仙友浄友

冬日和(side:仁志 in 『埋み火』 最終話)【仙友浄友 №55】

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冬日和(side:仁志 in 『埋み火』 最終話)【仙友浄友 №55】



「大政奉還!?」

 道場に集められた 狼士隊たちが ざわめいた。

「そうだ…。」

 苦渋に満ちた表情で 唐沢隊長が続ける。

「将軍様にあらせられては 政に関わるすべての権利を 帝にお返し奉ると決断なされた。」

「そんな ばかな!」

「これも 世の流れだ。我が狼士隊にも 解散命令が出た。」

「納得できませぬ!」

「この200年!日の本を太平に治めてこれたは、徳川将軍のご威光!」

「それまでは 争いの絶えぬ乱世だった!それを…!」

「断固、戦いましょう!我等 一同 力を合わせれば!」

 だん!

 隊長の刀が 床をたたく。

 騒ぎは さっと収まった。

「幕府の命により、結成された狼士隊は、解散だが…」

 全員を見渡しながら 隊長は続ける。

「改めて 帝より 引き続き 京の警護につくように…と ご下賜があった。
 我々は かつて 御所襲撃計画を阻止したことで 帝の覚えもめでたいからな。」

「武士は二君に仕えず…と 申します。」

 根岸が 唇をかみしめて 声を絞り出す。

「私は 将軍様のおんために!」

「将軍様は、帝からの提案を拒んで 徹底抗戦を行ったなら 町を 戦火で包むことになり、
 人民が苦しむ…とのお考えだ。」

「…!」
 
「将軍様のおんために…と 思うなら そのご意向を 尊重申し上げるべきだろう。」

「し、しかし!」

「国が国としてあるのは…民がいるからだ…。」

 静かに 隊長が諭す。

「将軍様だろうが 帝だろうが 国を支える民がいなくては、どうしようもない。違うか?」

「…お言葉通りでございます…。」

「派手派手しく 表舞台にたつことはなくとも…本当の意味で 国を支えているのは 
名もなき民。この未曾有の混乱のさなか、真に危険なのは、彼ら、力なき民だ。」

「…はい…」

「我等は この町の平安を ここに住む人々をまもるために 力を尽くしてきたのだ。
 給与の主が 変わったとて 我等の役目に 変わりはない!」

「…」

「埋み火になるのだ、俺達は。」











「『埋み火』…で ございますか。」

「ああ。熱き想いは 胸に秘め、その想いを 日の本の発展のために捧げよ…と。」

「隊の皆様は…」

「隊長の指示に従う…と 誓った。全員が 涙にくれていたが…な。」

「…ご立派です…皆様…。」

 舞が つと立ち上がって、文机に向かって座る。 

「…結局…父の考えどうりに…世の中 動いているのですね…。」

 ぼそりと つぶやいた。

「あれほど…外国をお嫌いになり、勝手に条約を結んだと…父を非難なさった帝が…
 その外国の協力で 政治権力を 取り戻される…。」


 閉じた目から つっと涙が落ちる。

「父は…父の死は…!」

「舞!」

 播州で3か月療養させた後、かごに載せてゆっくり 京に連れ帰ってきた。
 「けして 感情を高ぶらさせてはならぬ」と 医師に厳命されている。

 優しくその体を抱きしめた。

「お義父上が 我等を 引き合わせてくださったのだ…。」

「仁志…様」

「一緒に歩もう、舞。」

 その耳に そっと語りかける。

「お義父上が思い描いたとおりに歩んでいる この国の行く末を共に見届けよう。」


「…はい…」
 ほろほろっと 泣き出す彼女のほほに口づけて 涙を吸い取る。

「さあ、今は 生まれる子のことだけ考えるのだ。ゆっくり、休め。」

「…はい」

 ふと
 文机に 書状が広げてあるのに 気づいた。

「これは?」

「あ。すぐ ご報告すべきでしたのに…。」

 あわてて 文を取りあげて、俺に差し出す。

「真吾様からです。めでたく ご婚約が整われたそうで。」

 芯からうれしそうに言う。

「ほぉ…?」

 あれほど 彼女を想っていた男が…?わずか三ヶ月で…?

 文面を見る。

『さる高官のかたより…内々の打診があり…実に佳き話に 橘家一同も喜んでおり…』 

 …?

 具体的な相手の名も 婚姻の日付も 書かれてはいない…?

『舞殿には いささかの後懸念もなく どうかお体を大切に… 寒さも厳しくなる折…』

 …相変わらず 彼女には 過保護な…。

 苦い思いで 最後まで、読み進めて…最後の一行に凍り付いた!

『追記 ご夫君に以下の伝言をお願い申し上げる。』

 その一行だけ 字の調子が変わっている!

『「最後のお約束 ゆめゆめお忘れなく」』 

 最後の約束…

   「…もし…舞殿を ご不幸な目にあわせたら 私が奪い返しに行く…。」

 手が震えた…!

 これは…この文は…!

「本当に 安堵致しました!」

 舞は 満面の笑顔を浮かべ 弾んだ声で言う。

「真吾様には申し訳ないことを…と 我が身を責め続けておりましたので…心のつかえが
 一気に下りた心地です!」


「…あ、ああ。」

「幸せになっていただいきたいです!あの方にも!とてもいい方ですもの!」

「そう…だな…」

 彼女が こういう性格だと よくわかっていて…その心を安らがせるために…

 こんな…辛い嘘を…!

   「…もし…舞殿を ご不幸な目にあわせたら 私が奪い返しに行く…。」

 見守っていくつもりなのだ…生涯!彼女のことを…!

「ところで 最後のご伝言…なんのことか おわかりですか?」

 彼女のことだけを…!!

「ああ…お前を幸せに してくれ…と。」

 嘘をつく気にはなれなかった…どうしても。
 すべて本当のことでもないが…。

「まあ…」たまりかねて 彼女が袖で目頭を押さえた。

「よかったです!私などより はるかに佳き方とのご婚約が 整われて!」

 ふるえる声で言う。

「でなければ 生涯 罪の意識に苦しむところでした!」

「きっと…幸せになられる…立派な…御仁だ…」

 そうであってくれ!頼む!!

「…子が生まれたら 真吾殿の字をいただいて名付けよう…男でも女でも…」


「ええ!私も ぜひ そうしたいと思ってました!」

 晴れ晴れとした笑顔には もはや一筋の影もない。

 …あの男も…埋み火になるのか…

 心の内に 熱く消えぬ想いをかかえて…。

「きっと真吾様のように 心優しい利発な子に なります。」

 京の…佐幕派の中には 徹底抗戦を主張して 朝廷に刃向かおうとする一派もある。

 義のために命を賭ける…そんな生き方もある。

 だが…俺は…

「仁志様!白鳥が!」

 舞が 窓の外を指さす。

 白鳥の群れが 悠々と空を飛んでいく。

「仲良く飛んでいきます…淡海の海にゆくのでしょうか…。」

「お前の生まれ故郷…だな。いつか 共に帰ろう…。」

「はい。親子三人で…。」

 いとしそうに 自分の腹に手をやるしぐさは 母のもの。

 なんと そしられてもいい。

 俺は 愛に 生きよう。

 守らねばならないのは 目の前の このか弱い妻。そして 幼き命。

 真実 守らねばならないのは…愛する家族!!
 
 俺は 俺の選択を 決して後悔しない…。

 この身を 埋み火として 野に下ろう。

「時代が どう変わろうと…」

 舞の華奢な体を抱きしめて ささやいた。

「俺は 生涯 お前を守って生きる。どんなものからも。お前を幸せにする。必ず!」

 あの男との 約束通り!

「…幸せです…。あなたさえ、ずっとおそばにいてくだされば…。」

 涙に濡れた目で見上げる彼女の唇にそっと口づける。

 窓の外には 冬日和の明るい陽射しがきらめいていた。
 

   ― あふみの海 磯うつ波の いく度か 御世にこころを くだきぬるかな ―


    『白鳥の歌』  「埋み火」☆テーマ曲

            ~ by Syou Fuwa ~ 

湖面をすべる 優雅な白い鳥
水面(みなも)に隠れた足は見えない
静かなる夜 かそけく響く虫の音
君を想う心 誰にも見えはしまい

月がささやく 優しくひそやかに
星が瞬き 君の面影 揺れている
愛の苦しみ 哀しみ 切なさを
知らずにいた日々 戻らない
                         
白鳥は飛ぶ 誇り高く
海の碧にも 空の蒼にも そまらずに
その眼は どこをめざすのか
心に 何をのぞむのか

朝日が昇る 雲が流れる 穏やかに
穏やかな空 君のほほえみが見える
愛の優しさ 喜び 幸せを
知らずにいた日々 戻れない

             ( 『白鳥の歌』(シューベルト)より 着想)
 
  

           『埋み火』   ― 完 ― 


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