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「松蓮聖戦」
最終章 絶えずの炎

『出雲物語 第2章 3』(side:祐規)【絶えずの炎 №42】

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『出雲物語 第2章 3』(side:祐規)【絶えずの炎 №42】

「こちらの…高貴なる出雲の方々をご紹介頂けますかな…三条殿…」

 左大臣 篠原殿が すっと近寄ってくる。

 笑みを作った顔の奥
 こちらを 見据える眼が 鋭くとがっている

 …来たな!
 
「はい。左大臣殿。こちらは 次回の除目で あらたに 従5位にお就きになられる
出雲の…八雲早雲殿 ならびに、ご子息 千早殿でございます。」

「さ!左大臣様…?!お、お目にかかりまして…こ、光栄至極に…!!」

 ははぁーっとばかりに
 父親の方は床にはいつくばるように頭を下げる。

 息子も わずかに遅れて 同じように礼を取った。

「いやいや。ご丁寧なご挨拶 痛み入りますな…。」

 どうやら 期待以上の反応に 気をよくしたらしい。

 左大臣の眼つきが いささか 和らいだ。

「除目以後は 同じ殿上人として 座を並べる身。よしなに ねがいますぞ。」

「…そ!そのようなっ!お、畏れ多い!!」

 根が小心者らしい父親が 真っ青になる。

「おやおや。そのような頼りないお返事で…出雲の方様のご後見が務まるのですかな?」

「…あ!い、いや!…その…。」

「なにぶん 私どもは ひなびた地より 上って参りました 田舎者でございます…。」

 すっと 息子の方が 割り込んできた。

「なにかと ご教示願うことと存じます。どうぞ よろしゅうご指導ご鞭撻くださいませ。」

 丁寧に頭を下げる。
 文句の付けようのない挨拶に 左大臣は あからさまに憮然とした。

「官位をいただいてしまえば…何の言い訳も通じませんぞ。せいぜい 励まれるのですな!」

 最後に嫌味を言いはなって離れていく。

「…あの方のご息女が 後宮におられるのですか…。」 

「ええ。梅壷の女御殿…とおっしゃる お美しいお嬢様が…。」

 内心
 千早という男の頭の回転の速さに舌を巻く。

「ご後見の地位の高さ。添い臥の頃から 帝に仕えておられる 縁の長さ。
 どれをとっても 上に立てる方はなく…。」

「帝のご寵愛以外は…というわけですか…。」

 …っっ!

 あわてて 周囲を見回す!

 よ、よかった!
 傍らには 誰もいなかった!!
 
「ち、千早!」

 父親が 泡を食って息子を責めている。

 し
 心臓が縮むかと 思ったっ! 
 
「ち、千早殿!こ、この宮中では…軽はずみなご発言は!」

「…わかっております…申しわけありません…。」

 わかっているのか!?本当に!

 玉藻様に 正式に『后』になっていただくには
 なんとしても 彼らに 立派な『ご後見』になってもらわねば!

 官位だけ授けても
 中身がすかすかだったら

 烏帽子かぶった 猿に過ぎない!

 父親の方は もはや手遅れにしても

 この若い息子の方ならば…
 まだ…仕込みようもある…と見込んで連れてきたんだ!

 まだ 何も始まってもないうちから いきなり こけたりしないでくれよ!?

「三条殿…」

 上皇様に仕える近習の一人が 声をかけてきた。

「お召しにございますれば…。」

「かたじけのう…。」

 極端に 省略した言葉に意味がつかみかねたのだろう。

 ぽかんとしている父子を促して 奥の部屋に向かう。

 遠巻きに我等一行を 見つめていた 貴族達が
 憎悪を込めた視線を送ってくる気配を ひしひしと感じる。

「上皇様 皇太后様 出雲の方 縁(ゆかり)の方々をお連れ申しました。」

「…え?」

「じょ…じょう…こう…さま?!」

 真っ青になって 固まってしまった父子を 励ますようにして 部屋に入れる。

「おお!そちらが 出雲の方の…命の恩人。」

「よくぞ お助け申し上げ お育てくださいました。私からも お礼を申します。」

「は!ははーっっ!!も、もったいのうございまするっっっ!!!」

 父親は もはや床に顔面をへばりつけたまま はがす気配がない。
 
 息子のほうも
 紙のように白くなった顔をこわばらせて 低く頭を下げた。

「そのように かたくならずに…私たちは 玉藻様をご縁に親類同士になったのですよ。」

 優しくほほえまれる皇太后様のお言葉に かしこまったままの父親の肩が震える。

「お、お言葉…か、かたじけのう…。」

 床が濡れ しみが広がっている。感極まったようだ。

「そちは?八雲殿のご子息であられるか?」

「…千早と…申します…。」

「まあ!美々しい若者ですこと!
 殿上なされたあかつきには、さぞや女房どもが もてはやし大騒ぎいたすことでしょう。楽しみですわね。」

「て…てん…じょう…!?」

 ようやく 父親が 涙まみれの顔を 上げた。

「従5位の官位をいただいた上は、常に御所に伺候するのは 当然の勤めなのですよ。」

 こっそり 八雲殿をたしなめる。

「い。いや!しかし!わ、私には!出雲の…大社の 大事なおつとめが!」

 宮廷のほんの入り口のぞいただけで
 すっかり肝を冷やしたらしい父親が震えながら言う。

「確かに…出雲大社のおつとめも お大事だ。」

「御所への伺候は ご子息に一任なさればよろしいわ。」

「え…。い、いや!息子一人 宮中に置くわけには…!」

「お言葉かたじけのう 承りましてございます。」

 おじける父親とは 対照的に
 息子の落ち着き払った声が響いた。

「私の全身全霊をかけて お仕え申し上げます。
 玉藻…様の ご後見役として恥じぬよう…。」


「よくぞ 言ってくれた!」

「ご容貌だけでなく 才気も秀でておいでのよう…。頼もしいですわね!」

 …確かに…
 貴族の中に入っても まるで見劣りしない…
 というより ひときわ ぬきんでている 美々しい顔かたち

 才気も…なかなか…どころか

 俺が まだ なにも言ってないのに

 左大臣との…あの やりとりだけで…!
 自分たちが 何を求められて 官位を授かったのか 素早く悟った回転の速さ!

 この男
 あまりに できすぎている!

 なんだろう…この 悪寒は!?

「心強いご後見を得て 出雲の方も さぞ お喜びでしょう。」

「これで 堂々と『立后』を宣じられるというもの!」

 上様方は 実に ごきげんよう あらせられるが

 なにやら 冷たい鋭いものを 飲み込んだような
 ぞくぞくした 寒気が はうように 体の中を走っていった。




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