スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←『出雲物語 第2章 3』(side:祐規)【絶えずの炎 №42】 →身に染みる初湯(side:K)【絶えずの炎 №44】
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。



総もくじ  3kaku_s_L.png 松蓮聖戦
もくじ  3kaku_s_L.png 天地の詩
もくじ  3kaku_s_L.png 宝物
もくじ  3kaku_s_L.png 献上品
もくじ  3kaku_s_L.png 単発SS
総もくじ  3kaku_s_L.png 『恋だの愛だの』
もくじ  3kaku_s_L.png ツイッター
もくじ  3kaku_s_L.png バトン
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【『出雲物語 第2章 3』(side:祐規)【絶えずの炎 №42】】へ  【身に染みる初湯(side:K)【絶えずの炎 №44】】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「松蓮聖戦」
最終章 絶えずの炎

『出雲物語 第2章 4』(side:千早)【絶えずの炎 №43】

 ←『出雲物語 第2章 3』(side:祐規)【絶えずの炎 №42】 →身に染みる初湯(side:K)【絶えずの炎 №44】
文字色『出雲物語 第2章 4』(side:千早)【絶えずの炎 №43】

「…りっ!立后っ?!…」

「ええ。八雲殿の従5位授与の後に…宣じるつもりですの。」

「…な、なんと…!畏れ多い!玉藻様は まことにお幸せな!」

 喜色満面の親父のかげ

 顔色を変えたのがわからないよう
 いかにも控えめな風を装って 頭を下げた!

 …なるほど…!

 やれ お助けしたの お育てしたの
 もっともらしい おためごかし並べやがって!

 なんのことはない!

 玉藻を『后』にしたいから!
 親代わり(タテマエ上!)の我が家に あわてて 官位を授けたってわけだ!

 このやろう!!

 ふつふつと 怒りがたぎる

 酒肴が運ばれて 即興で開かれた内輪の宴。

 内心の怒りを必死に隠しながら 酒を飲むフリをする。

 かちんかちんの親父を 解きほぐそうと和やかに上皇夫妻が話しかけてくる。

「それにしても…玉藻…とは また ゆかしくも 美しいお名前ですこと。」

「なよやかに可憐な 出雲の方には まことにふさわしい。
 これは?八雲殿がおつけになられたのですか?それとも奥方が?」

「あ!いえ!…玉藻様の納れられた篭のそばに置いてあった和歌から!」

「…和歌…?」「まあ、どのような…?」

「は、はい。そ、…その…」

 親父がちらりと 俺を見る。

 まったく!

 めんどうくさがって
 適当にそこからとったから 覚えてないとは言えないんだろう!さすがに!

「『うつせみの 命を惜しみ 波に濡れ 隠岐のありそ(荒磯) 玉藻刈り食(は)む』…という
 歌でございました…。」

 玉藻が納れられていた篭やら産着やら 持ち物一式 保管してある。

 なんとか あいつの親を捜したくて
 何度も それらの品々確かめていたから 和歌も完全にそらんじてる。

「…まあ…。」

「まあ ようするに荒れた海から 海藻を採って食べなければ 飢え死にしそうなほど
 貧しい海人ゆえ、この子を育てられない…と 言いたかったのでしょうな。哀れなことで。」

 やっと思い出したらしい親父が したり顔で取り繕う。

「…だが…その和歌…なにやら…聞き覚えが…。」

「本来は、『伊良虞(いらご)の島の』と 歌っております。万葉集では。」

「おお!そうだ!そうだった!本歌は『伊良虞の島の 玉藻刈り食む』だな!」

「…ということは…それなりに 教養のある身ですね?
 本当に単なる海人ならば 万葉集の 歌など心得てるわけがありません。」

「…まことに…。仰せのとおりと存じます」

「…ほかに…なんぞ 手がかりになるようなものは なかったのですか?」

「は、はあ…。その歌を書いた紙の重しがわりに 安っぽい小柄があったきりで…。」

 親父が おずおず言い添える。

「小柄…?」

「今、持っております。これでございます…。」

「おお!これは 用意のいい!」

「安っぽいとは申せ 玉藻…様にとっては 大切な宝物…。なにぶん…3月前のご出立は
 あまりに あわただしすぎて これ一つ持ち出すいとまさえありませず…」


 つい恨みや怒りが にじんできそうになる!
 そうならないようにするには すさまじい意志の力が必要だった!

「こたびのありがたいお召しを幸い、玉藻様に お渡ししようと持って参りました。」

「そ、それは…。」「た、大儀でありました…。」

 なんともいたたまれない声で 上皇が答えに詰まり、皇太后が真っ赤になる。
 『本当にあの子は!親に恥をかかせてっ!!』口の中でつぶやくのがかすかに聞こえる。
 
「し、仔細に見たいのだが…かまわぬか?」

「もちろんでございます。どうぞ。」

 上皇に 古びた小柄を差し出す。

 何の変哲もない 黒い漆塗りの小柄だ。
 塗りも浅く 荒っぽい細工で 売り物にもならなかった…

 おかげで 玉藻は その小柄を 自分のものにできた。
 金に換えられるものなら さっさと 売り払っていただろう!この強欲親父は!

「…ふぅむ…。漆は一度しか塗ってないし…しかも…まだら…。粗い仕事だな。」

 つぶやきながら 上皇が鞘から抜く。

「…だが…刀の鍛え具合は見事なものだ!」

 刀身を 袖でぬぐい、しげしげと見つめる。

「…折角の刀が もったいないことだな…この鞘は。」

「はい。まことに。」
 
上皇が返してきた小柄を うやうやしく頂きながら答えた。

「ですが…玉藻様には たったひとつの親の形見。すぐにでも 手渡しとうございます。」

「…それがな…。」

 上皇が 笑いをこらえながら 答える。

「儀式続きで…ろくに 玉藻殿と ゆっくり時を過ごせなかった…と 帝がごねられてね。」

「我が息子ながら…本当に子どもみたいで お恥ずかしい…。誰にも 邪魔されないよう、
 ゆっくり 二人きりになりたいなどと…申して。」

「丹後のあたりに よき温泉があってね。そこに行っておるのだよ。むろん、除目前には
 ゆとりをもって帰って来ると思うのだが…。」

「おお!それは お仲むつまじいことで!」

「…さようで ございますか…。」

 あの…恥知らず!
 極悪人!…人さらいが!

  己の立場をいいことに

 好き放題 勝手気ままに ふるまいやがって!
 
 すぐに 会えるとは 思わなかったが…。

 まさか 京にさえ いないなんて!

「まことに 相済まぬな。さぞや 出雲の方に 逢いたかったのだろうに。」

「…い、え!じ、除目の折りに お目通り願えれば それで!!」

「…玉藻様が お健やかでお心安らかに お過ごしなら よろしいのです。」

 耐えろ!

 ここで 馬脚を現すわけにはいかない!

 その一念で 必死に平静を装う。

「ご心配には及びませぬ。最近は 出雲の方も すっかり ここの生活にお慣れで。」

「私どもに 可愛い孫を授けてくださる日も 近かろうと 待ちかまえておりましてな!」

 上皇夫妻は 高らかに 心地よさそうに 笑いさざめく…。

 …! 

 わかってしまう…いやでも…。

 …目の前の…こいつらが
 
 真実…

 玉藻を
 我が子のように 慈しんでいることが

 いやおうなく わかってしまう…!

「玉藻殿に似てくれれば お優しくお美しく才のある 素晴らしいお子に育ちます!」

「まことに!歌は どなたより早くお上手!管弦の楽なぞ 奏ぜぬものは 一つもなし!
 しかも どの楽だろうが そのへんの楽人なぞ 及びもつかぬ技量!」

「古今集も万葉集も すべてそらんじておられますし!」
 
 …それどころじゃない…。

 8歳の時には
 古事記・日本書紀
 あまつさえ 四書五経さえ そらんじてて!

 親父に
 『おまえに玉藻の頭脳の10分の1でも備わっていれば!』と
 どれほど 歯がみしながら 嫌味を いわれたかわからない!

「一月も立たぬうちに 和歌も書も楽も 他のなにをもってしても とうていかなわぬ!
 …と 後宮中の女たちが 思い知ったのですよ!」

 我がことのように 誇らしげに語る その様子は
 まさしく 愛しい我が子を自慢する 慈父・慈母の顔!!
 
 親父やおふくろとは 大違いだ!

 身分は…こいつらのほうが 断然 上なのに!

 …少なくとも…親の愛…という点では…
 こいつらのほうが…玉藻を…大事にしている…ようだ

 オレの親達なんぞ 比べものにならないほどに!





 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png 松蓮聖戦
総もくじ 3kaku_s_L.png 『恋だの愛だの』
総もくじ  3kaku_s_L.png 松蓮聖戦
もくじ  3kaku_s_L.png 天地の詩
もくじ  3kaku_s_L.png 宝物
もくじ  3kaku_s_L.png 献上品
もくじ  3kaku_s_L.png 単発SS
総もくじ  3kaku_s_L.png 『恋だの愛だの』
もくじ  3kaku_s_L.png ツイッター
もくじ  3kaku_s_L.png バトン
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
【『出雲物語 第2章 3』(side:祐規)【絶えずの炎 №42】】へ  【身に染みる初湯(side:K)【絶えずの炎 №44】】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【『出雲物語 第2章 3』(side:祐規)【絶えずの炎 №42】】へ
  • 【身に染みる初湯(side:K)【絶えずの炎 №44】】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。