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「松蓮聖戦」
最終章 絶えずの炎

『出雲物語 第3章 1(side:楓)』【絶えずの炎 №46】

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『出雲物語 第3章 1(side:楓)』【絶えずの炎 №46】


「か、楓様!」

 女房の一人が 悲鳴混じりの声を上げた。

「なんです?はしたな…」

 言いかけた言葉が 宙に浮く。

 女房が指し示す手の先に とまどったようにたたずむ玉藻様!

「玉藻…?」

「どうなさいました?出雲の方?」

 気遣わしげに 御簾の向こう側から
 帝と皇太后様が 玉藻様にお声をおかけになる。

 霜月半ば
 神嘗祭の後の節会

 貴族が相集う盛大な宴の余興として
 後宮の女達だけで奏する 管弦の場。

 正直
 玉藻様に 管弦のお心得があるのか 不安だったのだけど

 前もって 箏の譜面を渡されて 練習なされてたご様子を拝聴する限り
 どなたにも 決して 後れはとらない…というより…相当なお腕前だった!

 だから すっかり 安心してのぞんだこの宴…!

 なにも ためらう必要などない…。

 予定通りならば!

 今
 玉藻様の前に置かれたのは 琵琶だ!

「出雲の方様 どうかお席に。楽が始められませぬ。」

 いかにも優しげな上品な声で 梅壷の女御が玉藻様を促す。

 や
 やられたっ!

 皆様の前で 玉藻様に 恥をかかせようと!

「…ええ…。失礼致しました…。」

 そっと 玉藻様が 琵琶の前にお座りになった。

 おずおずと 楽器をお手にされる。

「…ど、どういたしましょう…玉藻様は 箏のお稽古しか…。」

「だ…大丈夫よ!…皆様の 演奏にまぎれてしまえば!」

 最悪
 演奏するフリだけでも!

 …と 思った私は 浅はかだった!

 梅壷が 優雅な手つきで箏を弾き始め…

「きょ、曲まで違います!お、おまけに…こ、これは!」

 …半分以上 琵琶の独奏の譜!!
 
 目の前が 真っ暗になる。

 どうしようもなく 立ち往生なさる玉藻様のお姿が 眼にみえるようだ!

「帝に!すぐ中止にしていただくよう!言上を…!」

 すっくと立ち上がった私の耳に 妙なる琵琶の音が届いた。

 …え!?

 振り向いた私の眼に
 愛し子を抱くように優しく 琵琶をつまびく玉藻様のお姿が映った…!

 思わず へなへなと座り込む。

 天上から響いてくるような…
 周囲に天女でも舞っているのではないか…と思わせる調べ…

 眼を閉じれば 幻想的な夢のように美しい風景が広がっていく…!

 おおおおお~!

 楽の音が終わったとたん、
 周囲の貴族達から 大きな歓声と拍手が わき起こった。

「いや!これは…このような琵琶…!生まれて初めて聴き申した!」

「都で評判の楽人といえど こうまで すばらしくはありませぬ!」

 口々に感嘆する声で 宴の席は 熱く盛り上がっていた。

「いや!実に…見事であった…出雲の方…!」

「まあ…!ほ、本当に…まあ!これほどに 琵琶の名人であらせられたなんて!
 不覚にも 今日この場まで 全く存じませんでした!」

「そうと知っておれば、もっと早く贈ったのに!さっそく 良き琵琶を届けさせよう!」

 上皇様も 皇太后様も 帝も
 上機嫌で お褒めの言葉を 玉藻様におくられる。

「よく…ご存じでしたわね。梅壷殿。」

 皇太后様が 絹のようになめらかなお声で 最古参の女御に語りかけられた。

「このように 控えめなお方故…いつも お訪ね申していた私でさえ 気づきませんでしたのに
 …いつ…出雲の方が これほどの琵琶の名人と お知りになったのでしょう」

 いかにも おやさしげなお声と うらはらに
 その…お目の奥に 強い 怒りの炎が見える! 

 さすが 皇太后様!
 梅壷はじめ後宮の女どもが結託しての嫌がらせだと すぐに 見抜かれたようだ!

 …そうよね…。

 皇太后様とて
 玉藻様の練習風景は 何度もごらんになっておられたのだから!

 曲も楽器も違うことなど すぐ気づかれたはずだ!

「…は…。」

 さしもの女狐も
 さすがに 答えに窮している。

「まあ そこが…『名人 名人を知る』というのだろう…。
 梅壷殿の箏も いつもながら 誠に お見事であられた。
 よき合奏相手ができて そなたも嬉しかろう?」

「は、はい!楽しみが増えましてございます!」
 
 上皇様が さりげに とりなされるお声に 救われたように 女狐が低頭する。

「 さ、さあ…耳を楽しませたあとは、舌を楽しませるといたしましょう!
 山海の珍味をとりよせてございます!」

 女狐の父親…篠原左大臣が 無理矢理に張り切った声を出す。

 …ところを見ると…
 この狸親父も…承知の上の嫌がらせ…!

「さあ、おいで。玉藻。」

 帝が 玉藻様を おそばによばれ、優しくそのお手をとられる…いつものように…。

 玉藻様が 後宮に納れられて一月。
 帝のお目には もはや 玉藻様以外の女性は 映ってもおられぬようだ。

 常に 玉藻様のみを 傍らに置かれる。

 うつむいた女狐の肩先が かすかに震えていた。

 まあ…。
 …わからなくも…ないんだけど…その女心は…。

 これまで
 帝は どの方にも 平等に丁重に接しておられて
 後宮は 実に 平和で 穏やかそのものだったのだから。




 今

 年始の節会
 またも 行われている宮中の管弦の宴
 
 玉藻様が奏せられる琵琶の音に 耳傾けながら 2月前のことを 思い出していた。

 今回は もう 初めから 琵琶が玉藻様の担当…と 割り振られている。

 帝のお好きな
 琵琶が独奏の曲

 他の方々より 一段 高いお席
 くっきり 周囲に布もめぐらせている 特等席だ

 今朝
 亀岡からお戻りになったばかりで
 ほとんど 練習なさってないにもかかわらず

 いつもながら 実に 絶妙な
 玉藻様の名人芸に静かに耳を傾ける

 あの後も 

 玉藻様の他の楽器も聴きたい…の
 玉藻様のおんために 歌合わせを…だの
 みんなで 物語の写本を分担しよう…だの

 いかにも 玉藻様を お仲間に入れて歓待する風を装って

 こりもせず
 手を替え品を替え 女狐とその仲間の嫌がらせは続いたけれど

 一月ほどで

 ありとあらゆる楽器が 完璧におできになること
 万葉も 古今も すべて そらんじておられて 作るお歌も 見事なこと
 書のお手も…どなたより お美しいこと…

 否応なく悟らされてしまったばかりか
 むしろ 玉藻様の多才ぶりを 広く喧伝してしまう結果になってしまい
 
 さしもの女狐一派も かなり 落ち込んでいたらしい。

 ほんとバカよね!

 玉藻様の あのご性格なら 
 ずっと ご自分の才能など おくびにも 出されなかっただろうに!

 はたり…

 ん!?

 唐突に
 
 玉藻様の琵琶の音が…やんだ!?

 え?!

 あわてて目を開けて 玉藻様を見る。

 真っ青になって こわばっておられる!

 い
 いったい

 何が…!?

「…玉藻…!?」

 帝が 御簾の向こうで立ち上がられた。

「玉藻っ!!」

 次の瞬間
 下座の…貴族達の席から 舞台に駆け上がってきた人影があった。

 若い男…?

 身軽な動きで 玉藻様のお席に飛び上がる。

「…千早?!」

 ちはや?

 すらり
 男の手先に 小刀の刃がきらめいた!

「玉藻様!!」
 あわてて 玉藻様のお席にかけよった。

「玉藻!!」
 帝が御簾を飛び出して かけてこられる。

「何者だ!きさま!」 帝の怒声に 若い男が厳しく言い放つ!

「来るな!毒蛇だっっっ!!」

「え?!」

 きゃぁぁあああああああああああー!

 すさまじい悲鳴が起こって 管弦の座は大騒ぎになった。

 おそるおそる 男の手元を見る。

 へびの頭が
 玉藻様の 琵琶の胴に 小柄で突き通されている。

「これ1匹とは かぎらない!近付くな!」

「みな、下がれ!宴は お開きだ。」

 若い男の声に 帝は素早く反応した。

「線香だ!全員に10本ほど 線香をもたせて 派手に煙をたたせながら 帰らせろ!」

「お線香を!すぐに!!」

 続いて放たれた男の指示に答えて 皇太后様が 近習にお命じになる。
 
 大騒ぎしながらも 宴の席から 少しずつ人が出て行く。

「玉藻!玉藻は無事か!」

 帝が 玉藻様の元に駆け寄る。
 
「玉藻様!」

 蛇なんて!
 玉藻様に おけがは!?

「…だい…じょう…ぶ…。」

 震える声で 玉藻様が お答えになった。

「あ、あぶない…とこ…ろ…を…、い、いちはや…く…。」

 顔面は蒼白で 小刻みに震えておられるが…確かに おけがはなさそうだ…。

「…よかった!…間に合って!」

 若い男が 玉藻様を ひしっと抱きしめた。

「おまえ 昔から 蛇 大の苦手だったからな。あの表情で すぐわかった!」

 周囲にはられていた布のせいで 誰にも 玉藻様のお手元は 見えなかった。

 この若い男がいなかったら…今頃! 
 
 でも…
 この男…

 いったい…何者?!




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