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「松蓮聖戦」
最終章 絶えずの炎

『出雲物語 第4章2(side:祐規)』【絶えずの炎 №50】

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『出雲物語 第4章2(side:祐規)』【絶えずの炎 №50】


「な、なに…を…!」

 帝のお顔が蒼白になり、声が震えておられる。

「…なにを 馬鹿なことをいうのだ!あの男っ!!」

「…まあ 無理も ありません…。」

「妹としてかわいがっていた少女が あわや命をおとしかけたのだから…な。」

 皇太后様と上皇様が やんわり おいさめになる。

「…まさか!認めてやったのですか!?」

「とんでもない!そんなことすれば、そなたが 何しでかすやら!!」

「うむ。わしとて、まだ 命は惜しい…。」

 さすが
 ご子息のことは…よくおわかりだ…。

 帝が ぐっと お声を詰まらせられた。

「犯人は必ず探し出す。玉藻殿は、責任もってお守りする。…と 説得したんだが…。」

「…なかなか…情の強い方です。…地位でも財産でも びくともなさらない…。」

「近頃 珍しい すがすがしい若人だ。なんとか 納得してもらって 伺候してもらえば
 宮中の空気も さぞ清けくなるであろうに。」

「…ヤツは…?今は…。」

「宿直の部屋で 休んで頂いておる。」

「少しでも、出雲の方のおそばに…と おっしゃるので。」

「そう…ですか…。」

「まさかと思うが…悋気など起こしてはいまいな?」

「あの方は 出雲の方の命の恩人。ひいては、私たち みなの大恩人なのですよ!?」

「わ、わかっております!玉藻を失ったなら…私は…!」

 想像することさえ 恐ろしい…という ご様子…。

 無理もない。
 本当に 危機一髪だったんだから!

「失礼致します!」

 御簾の外 近習の焦った声が響く。

「どうした?」

「さ、左大臣様が 大変なことを 申し出したのです!!」

 許されて 御簾の内に入ってきた男が平伏して報告する。

「…とは?」

「冬のさなかに 蛇が巣からはい出て 琵琶に潜り込むなど…変事も変事。
 禍々しい凶事のしるし…。神意が こたびの除目を嘉なさらないのだ…などと
 そこかしこで 言いふらしているのです!」

「なっ!?」

「よ!よくも!そのような 図々しいことを!」

「ふむ。…先手をうってきたな…。」
 
 帝が すっくと 立ち上がられた。  

「…あの女ども 全員 後宮から たたき出してきます!」

「…ああ!だが、ちゃんと犯人をあぶりだした後に…だ!あのようなマネをしておいて、
 ここを出て のうのうと平和な人生送られては この世に神も仏もありはせぬ!!」

「…失礼ながら…。」

 御簾の外で 遠慮がちな声が響いた。

「そのお声は…。」

「おお!千早殿か お入りくだされ」

 かしこまりつつ入って来た男は…玉藻様の…兄…代わり。

「犯人のあぶり出しは…この私にお任せ頂けないでしょうか…いささか 策がございます。」

 …え…!?

 思わず
 そこにいる一同 互いに顔を見合わせた。






「初めまして 皆様。私は 八雲千早。妹の玉藻が たいそうお世話になっております。」

 後宮の女ども全員を呼び集めた大広間。

 彼が 正面の舞台に立ったとたん、
 目引き袖ひき あちこちで女達が さざめく気配がする。

 誇り高い…後宮の方々でさえ こうか。
 さぞや…宮中の女房どもが 浮かれ騒ぐことだろう…!

「昨夜 我が妹 玉藻の琵琶に毒蛇が潜り込む…という変事があり、皆様方にも 大変な
 ご迷惑をおかけいたしました。深くお詫び申し上げまする。」


 おだやかにほほえんで丁寧に頭を下げる。

 さては、尋問の類かと 構えていたらしい女性達のこわばりが みるみるとけていった。

「しかしながら…人の口に戸は立てられませぬ。」 

 千早殿が言葉を続ける。

「この冬のさなか…本来なら 土中に眠っておるはずの蛇が 地にはい出すはおかしい。
 これは、人為によるものにちがいない…という噂が 野火のごとく広まっております。」


 ぴっきーん

 またも 後宮の女性達が 一斉にこわばった。

「皆様のような 高貴で麗しい女性達に そのような根も葉もない戯れ言がつきまとうは
 まことに不本意。玉藻も そう申しますでしょうし、私も そう思います。」
 

 いかにも つらそうな表情で真摯に語る…。

 …こいつ…本業は…役者…か?

「もし まこと何者かの策謀によりますものならば、玉藻の守護神たる 出雲の大神様が 
 断じて黙ってはおりませぬ。皆様もご存じの通り、出雲の大神様は
 御自らを頼みにする善男善女には 快く幸せを お授けくださる反面…」


 実に さわやかにほほえんだ。

「たたることにかけては、日の本1…!不心得な者には たちまち罰をお下しになります。」

 さぁぁーっと 場内の空気が冷たくなった。

「私は 出雲の大神官の息子。
 いまだ、半人前ではありますが、私でさえ この程度の力は 授かっております。」


 合図に応じて 3個の柑子(みかん)を三宝に載せて持って出た。

 彼は 側に置いてあった壷を さかさまにして 何も入ってないことを示した後。
 その柑子を 3個とも 壷に入れる。

 袖でふたをして…なにやら祝詞らしいことばを つぶやいた。

 しばらくした後。
 もう一度 壷をひっくり返す。

 ええぇえええぇえーー!

 後宮の女性達が 驚愕の叫び声をあげた。

 …?!

 は、鳩!?

 柑子は消えて 代わりに3羽の鳩が飛び出した!

「この神力を持って、皆様方の潔白を証明してごらんにいれます。」

 その言葉に 場の大騒ぎは 瞬時に鎮まった。

「この壷をご覧くださいませ。私どもは 裁きの壷…と 呼んでおります。」

 最初から舞台にあった物から白い布をはずす。
 なにやら まがまがしい 真っ黒な壷が現れた。

「出雲では、裁きの場で 無実を主張する者には、この壷の底に触れさせるのです。」 実際に壷に手を入れてみせる。

 ごそごそっと 探った後、ぱっと手を出した。

「なんの罪もない者ならば、これ、この通り、手はするっとぬけまする。ところが…」

 …ところが?!

「罪在る者が 嘘をついて 壷に手を入れたなら。底に手をついたが最後…」 

 ごくっ!

「壷に潜む裁きの神が お怒りになって その指をかみ切るのですよ。」
 ぞっっ!!
 
「嘘だとお思いでしたら 石見におもむき、刑場の骸をご覧ください。
 中に 指の骨のないものがあります。それこそが…。」


 ぞくぞくっ!!

「往生際悪く 己が罪を ごまかそうとした愚かな罪人どもなのです。」

 …し、知らなかった…!

「ここにおられる高貴にして華麗なるご婦人方は なんのご心配もございません。
 皆様方のようなすばらしい貴婦人がたに 罪など かけらもあろうはずがありません。」


 千早殿の名調子は続く。

「さあ、どなた様も この壷に手を入れて底にお触れください。
 そして、どうぞご自分の潔白を 天下に後喧伝くださいませ!」


 ざわざわ…
 女どもが 押し殺した声で側にいる同輩と会話をしている。

 その中で すっくと立ち上がった女が一人。

 梅壷の女御様!

 …元服の時 帝の添い臥しをお務めになった…最古参の女御…。

 …とはいえ
 当時の帝は 皇太子でさえない 傍流の親王に過ぎなかった。

 私の父は 帝の伯父上にあたり
 謀反の罪で島流しになった長兄に代わり 一時は東宮の地位についたことさえあった。

 だが…私や楓の母は 
 当時の摂政大臣の娘である女御様にお仕えする女房だった。

 摂政大臣や女御様のお怒りを恐れて
 父上は 私たち母子の存在を 必死に隠し通していた。

 やがて
 長兄 宗親様の無実が明らかになり
 先帝の譲位により 天皇の位がめぐってきたが

 宗親親王様を陥れたのは 自分の正妻とその父。

 なのに、自分が 嬉々として天皇になったりすれば
 宗親親王様のお怒りと呪いは ご自分ばかりか私たち母子にまで及ぶ!…と
 恐々となされたお父上は、即 譲位し、自ら 臣籍に降りられた。

 そのかいあって
 私たち親子は 平穏な暮らしができている。

 梅壷様は 当初 私の父…当時の東宮に入内するはずだったのが
 摂政大臣の策によって 阻まれて 仕方なく 傍流の政親様のもとにあがった。

 もとより望まぬ縁談だったのだろう
 本来なら…大后になれる身の上だったのだ…と
 何かにつけて思い知らせるような 高慢な言動がめだち 政親殿をうんざりさせていた

 そのほかの女御・更衣様方も にたりよったり

 いきなり 政親殿に 皇太子 さらには 帝の座が転がり込んできたせいで
 一気に あの方の周囲に群がってきた…というより 押しつけられてきた女性達

 後見の貴族様達の手前
 表面上は とりつくろって 失礼のないよう遇しては おられたが

 身分が変わったとたん 掌を返すようにこびを売ってくるのがどうにも興ざめだ…と
 どなたにも いっこうに 心が惹かれない…と 帝は ずいぶんお嘆きだったものだ。

 玉藻様に…巡り会われるまでは。

 梅壷の女御が 真っ先に手を入れて…
 …何事もなく…手を もどした…!?

 …!?

 てっきり この女かと思ったのに!?

 その後は 競うように皆様が 壷に手を入れて底に触れる。
 
 全員が壷に触れたが…全員がちゃんと 無事に手を抜いた!

「…そんな!」

 傍らの皇太后様が ぼうぜんとつぶやかれた。

「では、皆様。先ほど 壷に入れた手をおみせくださいませ。」

 さっと 皆様が手を見せる。どなたも 指がかけたりはしていない!

「…掌の方を…お見せください。」

 またも さっと こちらに掌をむける。

「失礼ながら…しばらくそのまま じっとなさってらしてください」
 …ん!?

 次第に
 一部の女たちの掌の色が変わっていく!

 真っ赤に染まった手と 白いままの手!

「白い掌の方々を…どうぞ 前にお連れください…!」

 梅壷の女御始め2,3の女御・更衣…その腹心の女房数人が 近習の指示で前に出されてきた

 お互いにぎょっとした表情で 顔を見合わせる。

「実は この壷の底には、時間がたてば 真っ赤になる染料を塗っておりましてね。」

 千早殿が 真っ赤になった自分の手を見せた。一転して厳しい目つきで。

「…どうして あなた方は 底に お触りにならなかったのか…お聞きしてよろしいか?」

「やましいことさえなければ ちゃんと 底に手を触れられるはずです!」

 皇太后様の怒りに震えるお声に 彼女たちは 真っ青になった。  

「…三条…!」

 帝の低く重いお声が響いた。

「は!」

「全員を座敷牢に!…沙汰は追って行う!」

「はい!」

 すぐ指図をする。
 ぱたぱたぱたっと 近習たちが 寄ってきて 女達を連行していった。

「これで…今回の犯人は あぶり出せたようで…。」
「まことに!またもお手柄であった!千早殿!」

「本当に!なんと機転の利く!」

「まことに見事な手際…だが 最初の柑子を鳩にかえたは…どういう…仙術なのか?」

「単なる大道芸です。民百姓なら 道ばたで見かける類のもの…高貴であるがゆえに
 ご存じなかったのが 幸いしました。」


 …。

 ふぅ…。
 やるじゃないか!こいつ!

「大変です!お主上!上皇様!皇太后様!」

 ん?

「楓!失礼だぞ!」

 ばたばたっと 走り込んで来た たしなみのない妹を 叱咤する。

「そ、それどこじゃ…」

 ぜいぜいと息を切らしながら 妹が叫んだ。

「玉藻様が!玉藻様のお姿が!どこにも 見あたりません!!」

 





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