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「松蓮聖戦」
最終章 絶えずの炎

『出雲物語 第5章 1(side:政親)』【絶えずの炎 №53】

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『出雲物語 第5章 1(side:政親)』【絶えずの炎 №53】

「それにしても ようございました!出雲の方がご無事で!」

「誠に!よかったよかった!」

 寝所でハラハラしながら 待っていた両親が なみだにくれている。

 御簾の向こう 
 褥の中…私の玉藻は ぐっすり眠っている。

 水滴に濡れそぼって冷え切った体を
 楓達が用意しておいてくれた湯殿で充分温めた後

 薬湯を口移しで飲ませ いくつもの綿衣でくるむようにして 休ませている…。

「犯人もあぶり出せたし!これで 万事 めでたしめでたしだな!」

「ええ!あとは除目の日を待つのみ!」

 父上と母上が 機嫌良く語り合われている。

「…恐れながら…。」

「ま、どうなさいました?千早殿」

「そなたの活躍により 犯人は見つかったのだ。もはや 何の心配も あるまい?」

「いいえ!根が残っている限り 雑草はしつこく生えてくるもの。
 根本原因が変わらぬ以上、蛇は また出てきます!今度は、人々の心に!」


「…え?」

「表には出さぬまでも…『氏素性のしれぬ捨て子を 皇后になど とんでもない!』…と
 人々は思っているのです!この数日…私や父が どれほど 皆様から 冷たく鋭い視線を
 浴びたとお思いですか?」


「…そ、そのようなもの…ねじふせてくれる!」

「私たちがついております!出雲の方や 八雲どの達に 辛い思いなど!」

「失礼ながら…やりばなく ねじれた不満は 思わぬ時に 思わぬ方向に出るのです!」

 恐れげもなく 千早がいいつのる。

「人にはそれぞれ生まれ持った分というものがございます。どれほど愛らしく才長けていても、
 …玉藻は…しょせん、親なし子。出雲大社の巫女を続けるのが、似合いかと…。」


「千早殿!」

「わ、私は 絶対イヤです!出雲の方を 手放すのは!」

 …。

「政親!どうして さっきから 黙っているのです!?なんとか言っておくれ!!」

「…母上…。」

「え?」

「最初から…どうにも 不思議でならなかったのです。」

「?なにが…です?」

「なにゆえ、母上は 玉藻を…すぐに お認めくださったのですか?…お父上も…。」

「え?」

「…そ、それは…そなたが 是非に…と。」

「私が可愛いから…お許しくださったのだ…初めは そう思っておりました…。ですが…。」

 どう考えても異常だった。

 殊に 母上の態度は!

 玉藻に会ったとたんに
 息子の私など 完全にさしおいて
 猫かわいがりといっていいような愛着ぶりで 日々玉藻の元を訪ねておられた。
 
「息子の私などより よほど可愛がっておられるように見えてしかたないのです…。」

 父上も 同様だった。

 お二方は ひとことも「みなしごなど后にはできぬ」とは おっしゃらなかった。

 貴族どもが こぞっていいたてることなど 予測できたろうに!

「父上。母上。今にして思えば…私が 玉藻を引き合わせたとき ひどく驚かれていたのは
 玉藻が あまりに幼すぎる…以外の理由があったのでは ありませんか?」


「「…!!」」

 両親の顔が こわばったのを見て 確信した。

「どなたかに…似ていたのでしょう?玉藻が」

 とたん
 はらはらはらっと 母上が 涙をこぼされた。

「典子!」「母上!?」

「…ええ…ええ…その通りです…。生まれ変わりのように思えたのですよ…!いいえ!
 絶対に生まれ変わったのです!出雲の神様が もう一度引き合わせてくださったのです!
 今度こそ おまえがお守りしろ!と、私に やり直す機会をお授けくださったのですよ!!」

「…え?」

「でなければ…これほどに…お姉様に…絹乃内親王に 似ておいでのはずがありません。
 まさに 生き写し!ご容姿も 性格も 管弦の才も ご聡明さも!こうまでうり二つな訳が!」

「まことに…。私も これこそは 絶対に 出雲の神様が お与えくださった縁。亡き兄上を
 お助けできなかった罪を 償う機会を賜ったのだと…。」

「…し、失礼ながら…いったい…。」

「千早殿…出雲の方は 無実の罪で隠岐の島に流され、非業の死を遂げられた 我が兄
 宗親親王のご正室 絹乃内親王様に 生き写しなのだ。」

「…は!?」

「絹乃様は 私の姉なのです。それは お優しく素晴らしいお方で!
 私は 心より お慕いしておりました!」

「…なぜ そのことを 私に…」

「絹乃内親王様は…武庫の野辺で 誰にも看取られぬまま 御髪の一筋も残さず 独り寂しく
 みまかられたのだ…。」

「そのような ご不幸なお方に似ていると言われて 良い気持ちは なさいませんでしょう?」

「その…武庫の野辺で倒れてた女性は 真実 絹乃内親王様だったのでしょうか…。」

「え!?」

「で、でも!確かに 盗人は 髪の長い女の骸から 紋入りの着物を…!」

「長い髪の女性などいくらでもおります。着物など…もらうことも 買うこともできます!」

「…!」

「千早!そなたの父が 玉藻を拝殿前で見つけたのは いつだ!?」

「じゅ…13年前の…夏で…。」

「父上!宗親伯父上が 流されたのは!?」

「14年前…秋…霜月…。」

「お別れになられた…その時 お子を身ごもったとすれば…計算は合います!」

 あの夢の中…!
 離れがたく抱き合われていたお二人!

 もしも あのときに 新たな命が授かっていたとするなら…!

「し、しかし…そ、そのような ご立派なお方なら!娘を捨てたりなぞ…!」

「…ああ。そのへんだけが どうしても…わからない。」

 あと 一押し!
 確証を得るための 何かが足りない!

「…千早殿…。」

 母上が うめくようなお声を出した。完全に血相が変わっておられる!

「…は?」

「玉藻殿の横に添えられていたという和歌…紙は!?実物は ないのですか!?」

「は…はい。こ、ここ…に…。」

 千早が あわてて首から下げていた守り袋を外す。
 絹地に 美しく梅の刺繍をしたもので 守り札が入っているようだ。

「これも 玉藻の宝物で…大事にしていたのですが…。
 あまりにも…急すぎるお召しで持ち出すいとまもなく…。」


 う”っ

 き、気のせいだろうか

 両親の目が なにやら 冷たく感じる!

「み、見せてくれ!」

 どうにか 威厳をとりつくろいながら 袋を開ける。

 守り札と共に 雅やかに折りたたまれた和紙が出てきた。

「…まあ!」

 母上が ひったくるように その紙をとる。

「こ、この折り方!最初から こうだったのですか!?」

「…?は、はい。職務上…我が家の者は 折り細工は なれておりまして…
 変わった折り方だと おもしろがって そのまま 再現したそうでして…。」


「…いえ…お、折り方だけでは…貴族の女達なら…この程度の…心得…あるかも…。」

 母上が必死に我と我が身に 言い聞かせるように 文を見つめている。

 開いてみたいが…開くのが恐ろしい…という風情で…。

 だが

 やがて

 折りが崩れないように ゆっくりと母上は紙を開いていった。

 現れた文字を 目にした瞬間 母上は固まってしまった。

 袖の中に 顔を埋めて よよと泣き伏した。

「…お…お姉様っっ!!!」

 父上が あわてて その紙をのぞく。

「…確かに…!この…麗しい筆遣い…見覚えがあるっ!」

「し、しかし…たまたま 字が似てるとか…手本にしたとか…。」

「この…折り方だと…上下が逆さまなのですよ…。」

「は!?」

「折りにも天地がある。本来なら 字は こう書かねばならんのだ。」

 父上が 紙の上下を逆さまにしてみせる。

「絹乃様は…ちゃんと 名を記しておられた…。千早殿に 和歌を聞かされた時点で
 気づいても よかったのに!」

「私たち…なんと おろかだったのでしょう!」

「え…え?」

 千早が 訳が分からないという顔で紙を見つめる。

 恥ずかしながら…私も同感だ。
 和歌が一首かいてあるだけで 名前などどこにも…。

「千早殿 この歌の本歌は?」

「は!『うつせみの 命を惜しみ 波に濡れ いらごの島の 玉藻刈り食む』…です。」

「この歌を よく ご覧なさい。妙なところが ありはしませんか?」

 言われて
 思わず 千早と二人して 紙をのぞきこむ。

 ― うつせみの 命を惜しみ 波に濡れ 隠岐のありそ(荒磯) 玉藻刈り食む ―

 …?

 四句目が 入れ替わっただけだ…が?

 はぁぁぁ~。

 父上と母上の溜息が重なった。

「男の子は 丈夫なのが一番だと 武芸ばかりさせたのが 悪かったのだろうか…。」

「もう少し 和歌の勉強も させておくべきでしたわねぇ…。」

 そ
 そんなこと 

 今更 言われても!

 必死で紙をにらむが

 この中の どこに
 『絹乃』様の お名前があるのか まったくわからない!

「…わかるか…?」

 恥を忍んで 千早に聞く。

 ところが
 千早は 指を折りながら 何事か口の中でつぶやいていたかと思うと。

「ああ!なるほど!」

 ぽんと 膝をうった。

「しかし…ずいぶん手の込んだことを!こうまでして 秘さねばならなかったのですか!?」

「そうとも。なにしろ 我が子は殺されたと思いこんでの逃避行だ。」

「お名前を明らかにしたら ご自分もこの娘も 命がないと思い詰められていたのでしょう!」

 一気に盛り上がる三人の会話に ぽつねんと一人とりのこされてしまう。

「あ。あの…?」

「ですが 機転の利く方ですね!古歌にことよせて よく こんな暗号を!」

「ええ!そりゃもう お姉様は 昔から ご聡明で!」

「あらゆる歌集 隅から隅まで そらんじておられたからな!」

 …。

 どうしよう…。

 私だけが わからない!

 いったい この和歌のどこに 書いてあるんだ!?

 『絹乃』…と!!






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