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「松蓮聖戦」
最終章 絶えずの炎

『出雲物語 第5章 2(side:楓)』 【絶えずの炎 №54】

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『出雲物語 第5章 2(side:楓)』 【絶えずの炎 №54】


「『隠岐のありそ』の次の『の』が… 抜けてる?『の』抜き…上下さかさまで…きぬの…!?」

 ぼうぜんとした 帝のお顔

「はい。やまと歌は、五七五七七の三十一文字です。しかし、これは三十字。」
 苦衷を見かねたのか 

 千早殿がこっそり正解をささやいたおかげで

 やっと おわかりになったようだ。

「この四句目が 字足らずになっているのは おかしいだろ?明らかに!」

「そうですよ!しかも、これは、どうみても『の』をつけるほうが 収まりのいい歌です!」

 上皇様・皇太后様が 心底 あきれはてたという風情でお叱りになられてる。

「…あの程度なら 私でもわかるのに…」

 折り方が上下逆にしてある時点で すでに『何かある』ってわかってもよさそうなものよ!

「ま、まぁ…そういう細かい情緒面に関しては 政親殿は昔から 大どかであられたし…」
 
 竹馬の友…の 腐れ縁で 兄が必死にかばう声には まるで力がない。

「ようするに…猪突猛進 直情径行 繊細さに 欠けておられるのよね!」

「か、楓…!」

 玉藻様に対しても そうだった!

 最初のころ

 まだ数え14の幼い方だというのに!

 あまりにも…だったものだから…

 毎夜 帝のお召しがくるたび
 おびえて泣いておられたんだから! 

 それでも 私たちにお気を遣って
 真っ青なお顔で 震えながら 寝所に向かわれるのが なんとも おいたいたしくて…

「そ、そりゃ…帝には 生まれて初めての真剣な恋。多少 余裕がないのも 無理は…。」

「多少どころじゃ…!」

 あのころ!
 どれだけ 玉藻様が!

 控えの場というのも忘れて 思わず大声を出しかけた瞬間

「失礼いたします!!」

 ばたばたばたっと 足音も高く 近習の一人が駆け込んだ。

 がばっと 平伏して奏上する。
 
「帝!例の小柄…!鍛冶職人が 急ぎ申し上げたき仕儀があると!」
 
「通せ!」

 間髪いれず 帝の許しがおりる。

「ん…?」

「小柄…?」

 上皇ご夫妻の不思議そうなお声に
 帝がなにか言われる前に すぐに鍛冶職人がまろびでてきた。

「私に言いたいこととは?」

「…お、恐れながら!この 小柄は どこでどのように お手に入ったのか!
 お教えねがいとうございます!」

 髪にすっかり霜の降りた…70近い 鍛冶職人
 凄腕で宮中の鍛え物は、一手に受けている…名人だ。

「…なぜに そのようなことを聞く?」

「これは…!この小柄は!」

 鍛冶職人の目は涙にぬれ 黒い小柄を持つ手はぶるぶる震えている。

「40年前!わ、わたしが、鍛えたものです!守り刀として!…亡き…宗親親王様の…!」

「なに?!」

「ま、まさか!!」

「馬鹿な!あ、兄上のは、特に高貴なつくりで!表面に瑠璃やら白玉やら…!」

「確かに見ためは、違います!ですが、この刀身!」

 言うが早いか 職人は持っていたやっとこで刀身をひねって 柄から抜き出した。

「ごらんあれ!」

 抜いた刀身の柄に刺さっていたほうの細い部分に 字が彫ってある。

 『宗忠天皇第一子 宗親親王 奉』

 …!?

「こ、こんなっ!」

「あなた!」

 上皇様の涙が ぽとぽとと刀身にうちかかる。
 皇太后様が ご夫君によりそわれ そっとその肩に手をおおきになった。

「…その小柄…!まさか…玉藻の…そばにあった…あの…?!」

「…そうだ…仔細に検分しようとしていたが…手間が省けたな…。」

「いえ!お主上!この小柄には…まだ 仕掛けが残っております!」


「仕掛け…?」

「この小柄の刀と外側…つまり 鞘と柄を よくごろうじくださいませ!」

 そういわれて
 ついに 私たちも たえかねえて おそばに近寄ってのぞきこむ。

「…不釣合いですね…。」

 ぽつっと 兄がつぶやいた。

「刀の見事さと比べて…あまりにも…お粗末過ぎる…漆の一度塗りなど…」

「しかも そうとう 雑で…だから…うちの者も 二束三文の安物だと…」

「装飾もですが、大きさもご覧ください!刀に比べて 格段に大きいのです!」
 
「…いわれてみれば…!」

「鞘と柄だけ売って…安物に入れ替えたとか…。」

「試みたいことがあるのです!お主上!どうか この黒漆 はがさせてくださいませ!」

 周囲の推論など ばっさり無視して職人は まっすぐに帝に訴える。

「許す!すぐに やれ!!」

「はっ!!」

 鍛冶職人は ささっと 腰につけていた道具袋を取り出した
 …ところを見ると…絶対に はがすまで ねばるつもりだったのだろう!

 私たちみんなが
 固唾を飲んで 見守る中
 職人は 慎重な手つきで 漆をはがしていく

「…これだ…!」

 漆の下には ぐるぐる巻かれた糸 それをはずすと油紙
 そして その下側には 紙 それもはずすと…きらびやかな瑠璃や白玉が現れた!

「ま、まちがいない!あ、兄上!…宗親親王様が…お、お大事になさっておられた…!」

「…ええ ええ 見覚えが ございます!…ございますとも…!!」
 
 14年ぶりに現れた豪奢な柄に
 職人が再度 刀身をはめ込み 鞘に納め 改めて 帝に献上する。

 …やはり
 やはり 玉藻様は!

 帝は すぐに 小柄を上皇様にお渡ししながら言われた。

「これだけ 証拠がそろったのです。もはや 貴族たちにも 文句は言えますまい!」

「ああ!改めて…宗親親王様ならびに絹乃内親王様のご遺児 玉藻内親王様として!
 大々的に披露目を いたさねば!!」

「うれしいこと!これでもう すべての憂いが消えました!」

 よかった!
 二度と 玉藻様が 軽んじられることはない!

 どこからも 文句のつけようのない 高貴なお血筋なんだから!

「…失礼ながら…」

 …!?

「…まだ なにか?」

「高貴なお方なら…わが娘を捨てるような行為 許されてよいのですか?」

 う”…!

「そ、それはそれは きっと!な、なにか 深い ご事情が!」

「お聞かせ願えますか?親が子を捨てる…獣にも劣る恐ろしい罪が許せるような
 『深いご事情』を…!」


「そ…!」

 な、なんて いやみな!
 そんなもの 答えられるわけがないじゃない!!

「…私も…知りたい…。」

 …!?

「玉藻!」

 ざっと 帝が立ち上がって 御簾の中に駆け込まれた。

 お起こしした帝のお胸の中
 玉藻様が 思いつめた目で震えておられた。

「本当に…私が…その方の…娘なら…知りたい!」

 そのお目から 白玉のような涙がこぼれていた。

「どうして…置いていかれたのか…!教えてほしいの…!」

「玉藻!」

 帝が おつらそうに抱きしめられる。

「…答えは…ここにあるのではないでしょうか…。」

「…祐規?」 

 兄が 鞘と柄に巻かれていた紙を取り上げた。

「何重にも折っていたので、一見したところではわかりませんでしたが こうして広げると…」

 …文字!!
 文になっていた!

「これは あなた様のものです。玉藻様。どうぞ、お読みください。そうすれば…。」

 もういちど 丁寧に折りたたんで 兄は 文を高く玉藻様に向かって捧げた。

「すべてのなぞが あきらかになるでしょう。」

 息遣いさえ聞こえそうな静寂

 玉藻様は 震えるお手で 兄から 文をお受け取りになった…!

 



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