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「松蓮聖戦」
最終章 絶えずの炎

『出雲物語 第5章 3(side:玉藻)』【絶えずの炎 №55】

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『出雲物語 第5章 3(side:玉藻)』【絶えずの炎 №55】


「『あなたは 敵でしょうか。味方でしょうか。』」

 …!?

 冒頭
 いきなり そんな挑戦的な書き出しで始まっていた!

「『あの和歌で…私の名を 判じられたお方なら お味方だと信じたい!
 ですが もし…!
 あなたが 宗忠天皇の意を受けて 宗親様の血統を根絶やしにしようと 来られた方なら
 どうか お願いでございます。後生でございます。先を 読まず なんの詮索もなさらず 
 疾く 都にお帰りくださいませ!!』」


「お、お姉さま!」

「お。おいたわしい!その頃には…父は…とっくに 前非を深く悔いておられたのに!」

「…遠く出雲までは 都のしかも かしこきあたりの醜聞など 聞こえません。
 まして…私どもは、皇太子さまは 病死なさったと聞かされておりました!!
 まさか 島流しなど 夢にも…!」


「…尊い血筋に そのような 恥は許されない…。とことん 秘密裏に行われたのだ…。」

「…『ですが…もし…お味方なら…どうか お確かめくださいませ。私の愛する娘は 幸せに
 暮らしているのでしょうか?』」


 周囲の会話は もはや遠い。
 
「『今 わが身には ほとんど力が残っておりませぬ…。
 どれほどに 愛する娘のそばにおりたくとも…
 その行く末を見届けたくとも…もはや…半月と もちますまい…。
 この文が…あなたのお目に触れている 今 私は もはや この世におりませぬ。』」


 手が…震えてくる

「『もしももしも この子が不幸な境遇にいたなら どうか 都に 宮中に 帝の第3皇子の
 ご正室 典子様に 助けをお求めください!
 心やさしい妹なら 必ずや 姪を お見捨ては なさいますまい。』」


「…!お姉さま!」

 皇太后様の悲痛なお声…も かすんでる。

「『半年前…宗仁が激しい腹痛にのたうちまわりながら天に召されたとき、私は悟りました。
すべては 義父の… 宗忠天皇のさしがね!ご子息、宗親様を流しただけでは あきたらず!
何の罪もない孫まで!このままでは おなかにいるこの子まで 殺されるのだと!』」


 こうまで…人を信じられなくなったこの方を 誰が責められるだろう!

「『私は 昨年…師走も末の真夜中 こっそり寺を抜け出しました。』」

 ぐっと 上皇ご夫妻が身を乗り出された。

「『手には、2,3枚の着物、宗親様の小柄。… これだけは どうしても 手放せなかった…
 愛用の琵琶。身に付けたのは、寺の使用人の着物…。
 髪も背の真中あたりで 切って後ろに高くくくり 男になりすませて…。』」


「…!ど、どうりで 必死に探索させても 見つからなかったはず…。」

「あ、姉上の ご聡明さが かえって恨めしゅうございます!」

「『髪も着物も市で金に替え、路銀を手にした私は 丹後の港まで馬を走らせ そこから
海路をめぐって 石見をめざしたのです。ところが…』」


「ど、どうしたと?!」

「『ところが…その船が 暴風雨に遭ったのです。木の葉のようにゆれる船・頭上にくる波。
 もはや沈む…という瀬戸際!人々はおののき 口々にののしりあう…まさに生き地獄!』」


 文を持った手に 思わず汗が浮く。

「『幼子の泣き声、女性の悲鳴…聞いているうちに たまらない思いに胸があふれ…私は
 いつしか 琵琶を奏でておりました。

 最期は心静かに迎えたい。
 愛する琵琶の音を お腹にいる子に聴かせて
 母子ともに 安らかな気持ちで 神の元に参ろう…。そう思ったのです。

 ですが 思いがけないことに

 私が 琵琶を演奏したのが合図だったかのように…風がとまり、雨もやみ 波もしだいに
 穏やかになり…ついには さんさんと日が照りだしました。

 むろん、自然のなすところ。単なる偶然の一致に すぎません。』」


「…偶然では ないのだろう…な。」

「ええ!絹乃お姉さまが 琵琶を奏されると 鶴が庭先に降りて舞を始めたり 虹がかかったり
 不可思議なことが 多々起こりましたもの!」

「『しかし、船に乗り合わせたかたがたは、まるで 私が嵐を鎮めたのだと言わんばかりに
 手を合わせて 拝んできました。たまたま 天気が変わっただけ…と どれほどいっても
 聞き入れてくれません。

 船は、ぼろぼろになって ようやく石見に 着きました。

 乗り合わせていた客の一人…設楽という若者が
 なんとしても 私に お礼をしなくては 気がすまぬといいはってついてきました。

 彼の世話で 私は、すぐ隠岐にいく小船を手配してもらい、島に向かいました。

 三ヶ月前…昨年の霜月
 泣く泣く お別れした いとしい夫に 会える!

 そのときの私の胸は 幸せにはちきれんばかりだったのです。』」


「…ああ…!」

「兄上は…野辺で倒れていた骸が…絹乃様だったと 思い込まされていたから…!」

「『隠岐に着いた時には…すでに…あの方が ご自害なさったあとでした…。

 島のものは、都から流されてきた者の素性も知らず…墓には卒塔婆が一本立ったきりの
 …粗略さ…でも、それすらも…島のかたがたの精一杯のご好意だったそうでございます。』」


「そ、それは!」

「その半月の後には!都に 丁重に御移しして 立派にお寺も!」

 上皇ご夫妻の 悲鳴混じりのお声がかすかに響く。

「『そのとき
 私は すぐにも おあとを追おうとしました!

 でも
 設楽が 私を とめました。

 お腹の中にいる その子まで 道連れにしてはならない…!

 こんこんと いいさとされ

 そうだ 私にはこの子がいる
 私には まだ この子がいてくれる

 ただただ その一念で…私は…生きつづけることにしたのです…。

 彼の父親は 芸人一座の座長だったのです。

 私は その一座の楽人の一人に していただきました。

 設楽も おうちの方も 一座の方も
 それはそれは 皆様が おやさしく 身重の私を気遣ってくださいました。

 貧しくて 身分も高くない…けれど 少しも 曲がったことのないかたがた
 どれほど その一座の皆様のお世話になったことか…言葉に尽くせません!

 それが…
 夏の初め はるばる九州から招かれ

 7日前に子を産んだばかりで
 いささか 肥立ちの悪かった私だけが 留守番をしていた時

 一足早く 襲ってきた台風によって…一座の皆様が…船もろとも…海中に没されたのです。

 その知らせが 私の…よわりかけた心の臓を 突きました…。

 日々…食事が のどをとおらなくなり

 どうやら 神の元に 夫の待つところへ…向かう日が近いのだと…
 自ら 悟るようになりました…。

 正直に申しましょう…
 私は この子を 一緒に…神の元に連れて行こうと思っておりました。

 こんな力ない赤子を ただ一人残していくなど!
 …この先 どんなつらい目に 遭うかわからないのに…!

 今、ここで 私とともに…連れゆこう…と。

 けれど
 おおきく曇りのない眼で 私を見つめ笑う わが娘を見ると

 できなかったのです!私には…!

 わが手で わが娘の命を 絶つことなど!

 でも
 どうすればいいのでしょう

 国司に…私たちの素性を打ち明け
 都から 迎えを…というのは みすみす この子を死の危険にさらすのみ!

 わが息子 わが孫を 死に追いやった この子の祖父は
 きっと 容赦はしないでしょう!宗仁のように 殺されるに決まっています!

 私は…市井の人々の情に懸けます。

 出雲大社の御神様のお力にすがります。

 どうか この子をお救いください!

 私に 力が残っていれば
 道端に座して 琵琶を奏で 小銭を乞いながらでも 海水を汲むのでも なんでもする!

 どんなことをしても この子を慈しんで育てていくのに!

 …出雲の大神様

 私は このあと
 この文を形見の小柄に封印し

 この子を 御前に置きにまいります

 そして 川に身を投じます。

 川は流れて 海にゆき
 海の玉藻は 私を あの方が眠る隠岐にいざなってくれるでしょう。

 出雲の大神様
 残り少ない 命ではありますが
 私は この身を奉ってお祈り申し上げます!

 どうか 私の愛する娘を お守りくださいませ!

 娘よ どうか 幸せに

 身分や立場など どうでもよい。

 そんなもの 少しも人を幸せにしないことを 私はいやというほど 思い知らされました。

 あなたが心から愛し
 あなたをこよなく愛してくださる よきお方とめぐり合われますように

 女として生まれた幸せを かみしめられる人生を 送ることができますように

 私は ずっと あなたを 見守っております。

   - 数ならぬ 身を幣(ぬさ)にぞ 祈るらむ わが愛し子に 幸よ多かれ -

                                              きぬの』」


 …本当に…最期の力をふりしぼったのだろう

 美しいが 弱弱しい筆あとが
 だんだんと 震え…薄れ…崩れゆきつつ 文は終わった

 その…文字…が かすんでいく…。

 胸の中に 熱い塊がこみ上げて せりあがってくる!

「…玉藻…」

 そっと 背中から 政親様が 優しく抱きしめてくださった。
 
「…なんということ…なんと…」

「お…隠岐に 着かれるのが…もっと早くか それとも遅くか…わずかに ずれておれば!」

 上皇様が皇太后様を 抱きしめられて
 お二人ともに 悔し涙にくれておられる。

「私…親に 嫌われたのでは ないのですね…。」

「…ああ!」 

「…いらないから 捨てられたのではなかったのですね…。」

「捨ててもない!大事だから…愛していたから!
 連れて行けず…置いたのだよ!玉藻!」


「…はい…」

 ええ

 ええ!

 信じます

 今なら
 信じられます

 信じることが出来ます

 私は愛されていた やさしく 深く

 真実 愛してもらえていた!

 連れてはいけない…と 思うほどに…!

 愛してくださっていた ちゃんと!

 でも

 でもっ

 ひと目でいい

 お会いしたかった

 お母様!!

 あとからあとから 涙がわきでてとまらない
 政親様は そんな私を ずっと 抱きしめてくださっていた。 





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