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「松蓮聖戦」
最終章 絶えずの炎

『出雲物語 5章 4(side:楓)』【絶えずの炎 №56】

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『出雲物語 5章 4(side:楓)』【絶えずの炎 №56】


「…かくいう次第だ…。」

 都中の貴族たちが勢ぞろいしている 大広間。
 しんと静まり返って しわぶきひとつ聞こえない。

「出雲の方…玉藻殿は、亡き わが伯父上・伯母上 宗親様・絹乃様の忘れ形見。
 ここにあらためて 玉藻殿を 内親王と宣旨する。異議はないな?」


 凛と響く帝のお声に
 全員が 静かに頭を下げる。






「それにしても…驚きました。40以上の方は皆 そろって…『やはり!』という顔で…!」

 披露目の儀式が終わったあと 帝は即 玉藻様と寝所にこもられてしまった。

 上皇様方は 御座所に八雲早雲殿を召されて
 玉藻様が社前に置かれていた日のあれこれを お聞きになられている。

 忙中の閑
 私と兄 そして 千早殿は 内裏の一角で お茶を飲みながら語り合っていた。

「ああ。…実は 皆 最初から 玉藻様が 絹乃様の幼い頃に瓜二つと 気づいていて…
 絹乃様の縁の者ではないかと こそこそ かげで うわさし合ってたとは!」

「知ってて…どうして 誰も おくびにも出さなかったのかしら!?」

「そりゃ…大人の女性に成長してしまったあかつきには どれほどの絶世の美女になるかは
 みんな 身にしみてわかっているから…。」

「…そうなると 絹乃内親王様のみを 唯一無二の妻として、頑として ほかの女性の入内は
 拒まれたという宗親親王様の二の舞…と いうわけですか…。」


「そういうことだ…。容姿だけならともかく…管絃や和歌の才まで 瓜二つ。
 玉藻様がおられては、絶対に わが娘を 省みられることはない…と 悟ったんだな。」

「…だから!性急に 玉藻様を 亡き者に…と!?」

 改めて 怒りがこみあげてくる!

「まあ 犯人はすべて 地方の寺に出家させたし…後見の貴族も処断したし…。
 後宮の女性たちは 全員 退出させて 縁談まで世話したし…。」

 左大臣始め 玉藻様暗殺を謀ったやつらは みな 島に流された…。

「これでもう なんの憂いもない!まこと 出雲の神様のありがたいおはからいだ!」

「…私も もう 用済み…ということですね。」

「千早殿!?」

「そ!そのようなことは!」

「私や父に位を賜るというお話は 玉藻様に うしろだてがほしいための苦肉の策。
 玉藻様の高貴なご出自が明らかになった以上、もはや 必要ないでしょう。」


「いや!帝も!上皇様方も そなたの両親に 深く感謝なさっておられる!」

「ええ!!皆様が お助けして ご立派にお育てくださったから 玉藻様が あれほど…!」

「玉藻様は ご自分で ご自分を 育てたのです!!」

「え?」

「私の両親は…玉藻が 幼い頃から とことん こきつかってきました!
 『おまえを育てるのにかかった金は 働いて返すのだ』と さんざん言い聞かせて!
 管絃も舞いも書も…われらには 仕事の一環!
 覚えさせれば 十分に ひきあう利があったのですよ!」


「し、しかし…きちんと…学問まで…」

「記紀、和歌、漢詩、四書五経…祝詞をあげる神職の身には 必須の教養です!
 私が…教わって…素読するのを…壁越しに聞いていた玉藻が暗唱してしまったのです!」


「「…!」」

 思わず 兄と顔を見合わせる。

 に、人間技じゃない!

「もしも…あの頃…小柄の中の文を見た方があれば、すぐに 宮中の皇太后様の元に
 ご注進が及んだことでしょう!『絹乃様の忘れ形見が ご不幸な境遇におられる』と!」


「千早殿…」

 彼のつらそうな目に…何もいえなくなってしまった。

「…それでも…」

 しばしの静寂のあと 兄が静かに言った。

「それでも 玉藻様には 君がいた。それだけで…玉藻様は、十分 お幸せだったはず…。」

「…え?」

「帝のお輿であろうがなんだろうが 血相変えて取り戻そうと 馬の跡をおってひた走るほど
 大切に慈しんでくれる存在がいたのだ。これほど お幸せなことはない。」

「…っ?!!」 

 真っ青になって 千早殿が立ちあがる。

「お、お兄様…?」

「…し、…知って…」

「蛇の事件で…初めて 君のつくろわない必死な声を聞いたときに…わかったのだ。
 あのときの若者だと…。『玉藻を返せ』…と 何度も何度も のどをからしながら
 叫びつづけていた君の声は 耳に こびりついていたからね…。」

「で、では…な、なぜ…今まで…黙って…」

 そうよ!
 なに 考えてるの!?兄さん!!

 すぐにでも 出雲に帰すなりなんなり!

「ずっと…気になっていたんだ。」

「…え?」

「…いくらなんでも…帝のやり方が ひどすぎると思ったのだよ。権力をたてに 無理に…。
 だが…あれほどに 真摯に思いつめた政親殿を見るのも 初めてだったから…つい 手を
 貸してしまった…。」

「…三条…殿…」 

「夜中にでも 君のあのときの声が響いてくる気がして…跳ね起きたことがたびたある。
 ひどく悪いことをしたのだ…と 自分で自分を責めたものだ。」

 そうだ
 
 やさしい兄なのだ… とことん

「…だから…あの宴で 君だとわかったとき…私は、決めたのだ。
 今度は 君に手を貸そう…後見として そばにあって見守るくらい許そう…と。」

「そんな!も、もし…玉藻様のお心が!」

 玉藻様が 寝言につぶやかれてたのは…この方…!

「もともと 帝が 無理に強いたご縁だ!!3月もたつのに お心を得られなかったのなら
 それは 政親殿の力不足!!…玉藻様さえお望みなら…手を貸してもよいと思った。」

「手を…貸す…?」

「常に命の危険にさらされ…意に添わぬ相手に縛られるような悲しい人生を歩まれるより
 君と二人生きていくのがお幸せというなら…仮死状態にな秘薬など お飲ませして…
 殺されたふうを装い お逃がししてもよい…と 心の片隅で考えていた。」

「…そ!」

 千早殿が息を飲んだ。

「お、お兄様!?」

「…だが…玉藻様が 千早殿を見る眼には すでに恋や愛の気配はない…。違うか?」

「…!」

「…想像だが…」

 兄が言いにくそうに続けた。

「玉藻様が…君を慕っていたのは…まことに『恋』…だったのだろうか?」

「…え…」

「周囲が皆…冷淡で つらくあたる中…唯一 やさしくしてくれた存在…。
 頼りに思うだろうし 慕いもするだろう。
 人は 誰も 一人では 生きていけないのだから。」

「…!」

 がくりと
 千早殿が その場に座りこまれる。

「…私の目には…今の玉藻様は ちゃんと政親殿を 恋しておられるように映るのだが…。
 千早殿は…いかがか?」

 …残酷な質問だ。

 千早殿の唇が震えた。

「映ります…私の目にも…」

 振り絞るような声で つぶやく。

「しょせん…兄にすぎなかった…オレは…」

「千早殿!」

「もしも あのまま 出雲にて 時を重ねていけば 自然に恋に昇華しただろう。
 君は これほど すばらしい男なのだから。」

 兄がやさしく諭す。

「愛する少女が 他の男といるのを見るのがつらい…心情はわかる…。
 出仕を拒んで 出雲に帰りたいなら止めはしない。だが…。」

 一転して 兄の目が険しくなった。

「宗親様と絹乃様が 陥れられたように…人の悪意は いつ どんな形で襲うかわからない」

 ただ
 純粋に愛を貫かれようとしただけ…

 なのに
 理不尽なねたみをかって…!

「常にそばにあって…愛する女性を かげながらお守りする…それも ひとつの愛では?」

 なっ!

「お兄様!ひどい!そんなこと!千早殿には あまりに!」
 
 日々 拷問のようなもの!

「…ええ…。」

 しばしの間の後…
 顔を上げた千早殿の目には 静かな光があった。

「管絃の座に飛び込むような無茶ができるのは 私くらいでしょう…。
 おそばにお仕えします。…生涯…。」


 その微笑には 深い哀しみが秘められてはいたけれど

「私の全てをかけて…!」

 声には ゆるがぬ決意がこめられていた。





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